さようなら、ゴーゴー!

どんな事にも「来る時が来た」はあるのだ。
だから、今日だって、そうなんだと思う。

三谷家初代牛「ゴーゴー!」が放射能検査屠畜のために
行ってしまった。
三谷牧場を始める時に子牛で買ってきて、
今までずっと一緒に頑張ってきた「ゴーゴー!」
あの子はいつも淡々としていた。
ちょこっとしゃくれた顔に大きな瞳、
他の牛が「事件」を起こしている時も、
初めて搾乳した時も、
三谷家の長男や次男がが生まれ、成長して、
三輪車で牛舎を暴走するようになっても、
他のどの牛よりも淡々と暮らしていたな。
いつも大きな瞳で、私をじっと見ていた。
何を訴えるでもなく、ただひたむきな瞳。
我が家では、初めて「死ぬ」ために
トラックに乗って行ってしまう牛を見送った。
朝、長男が「今日、ゴーゴーは行っちゃうんでしょ?今度はどこに行くの?」
と無邪気に問いかけてきたけれど、
言葉に詰まって答えてあげられなかった。
トラックが来てもお見送りしようかどうか、正直迷った。
きっと「ゴーゴー!」は淡々と行くのだろうと思った。
11時にトラックが来て「やっぱり最後に見ておきたい」と
見送った時、ロープで引っ張られながら
「ゴーゴー!」が牛舎から出てきた時だった。

大きな瞳でじっと私を見たから、
思わず手を振って「ゴーゴー・・」とつぶやいた。
すると「ゴーゴー!」が一瞬だけ「え!?」っていう顔になった。
嫌々トラックに積まれて、トラックが動き出した時には
私はやっぱり号泣して、言葉が出てこなかった。
「大好きだよ」とか、色々言いたかった。
経済動物を飼育しているのだから、泣くなんておかしいかもしれない。
でも、私はあの大きな瞳を忘れる事は一生できない。