雪の魔物と感謝と

厳しい寒波の到来で

毎年のことながら、目茶苦茶に積もった雪に

「厄介者」以外の感情を抱けなくなってくる。

 

雪の魔物は、大きくて広くて冷たい魔物絨毯で

牧場をズッポリと包んでしまうので、家の扉を開けるのも、車を出す時も

歩く事さえ、ままならなくなる。

そんな魔物絨毯に捕らわれてしまった時

例えば、

広大な牧場の敷地内の除雪作業だったり

乗用車やトラックが動かなくなったり

倒木や氷塊などを除去する時は

いつも何でも「ホイルローダー」の出番。

ホイルローダーこそ、我家の頼れる守護神だ。

ところが、今年はその肝心のホイルローダーが

雪の深みにハマってしまうという事件が起きた。(神様~~!?)

雪だまりで大きく傾いた状態で、いくらエンジンをふかしても

大きな車輪が虚しく空回りして、余計に深みにハマって行く・・。

絶体絶命の大大大ピンチに、

「こんな時はローダー!!」って言えない恐怖!

だって、ローダー本人がハマっちゃったんだもの!

まさか春まで待つ訳にもいかず、正直、絶望の涙である。

そこでお隣の肉牛牧場さんに救助をお願いした。

すると、すぐにシャベル片手に4人も来てくれて

お隣のローダーも出動して、

我家のローダー周りの雪掻きをして、ハマった部分に逆に雪を詰めていき

最後はローダーでググッと引き出して、実に見事な手さばきで

我家のローダーを救出してくれたのだった。

そして「よかった、よかった」と言葉少なめに

ぞろぞろと帰られたのだった。

雪国の人々は、普段は不愛想で無口で

「ひょっとして、私の事嫌い?」と感じる事も少なくない。

だけど心の奥には、利害関係なく助け合う文化が浸み込んでいる。

 

今回の事件で、再認識したことは

「一人で農業やっているんじゃない」という事。

普段は親戚縁者もいない地で、孤軍奮闘している気でいたけれど

ご近所さんがいてくれた事に改めて感謝した。

同時に、一人では牧場は出来ないとも思った。

昨今は飼料や燃料高騰、牛乳の消費低迷などなど

様々な要因が絡まり合って、酪農経営が破綻して無くなってしまう牧場が

後を絶たないけれど、

もしも、1つ減り2つ減り・・最後の1軒になったとしたら、

それは不可能だろう。

1人ではやって行けないという事に改めて気付かされた。

日本から農家が居なくなる時は、最後の1軒・・ではなく

最後の一群が、一気に居なくなる時だ。

 

今度は我家が何かお手伝い出来ればいいなと思う。

見えないけれど、人はつながって生きている。