開拓者物語

三谷牧場のお隣さんは
大きな野菜畑になっている。
そして、その野菜農家さんと三谷家の土地の隙間に
約0.8ha程の小さな三角形の土地があり、
そこは駅前に住むSさんの所有地だという。
どうして、このような配置図なのかというと、
どうやら戦後の農地配分のなごりらしい。
6年前に我が家が牧場を開業した際に
お城の石垣の大きな石と石の間にある三角の隙間の
ようなSさんの土地に、
牧柵を何本か入れてしまった事があり、
「無断でSの土地に入るべからず」という事で
丁重にお詫びしたという事があった。
その時は内心「え〜っ!?なんでここにSさん!?」と思った。
事実「いきなりSさん」の感は強い。
それ以来、彼の三角地帯は「寄らず触らず」として6年間放置されていた。
ところが、ある日突然Sさんがやって来て
「あの土地、ほっといても勿体ないしね、使っていいよ。」と
言ってくださったのだ!
これはびっくり仰天ニュースである!
我が家にとってはまさに「棚から牡丹餅」である!
実はというと、牛達のためにもうチョコッと放牧地がホシイナ〜と
思っていたところだったのだ!
偶然にもSさんがいらっしゃった日は妻の誕生日で
妻は勝手に「Sさんからお誕生日プレゼントもらった♪」とはしゃいでいる。
しかしながら、今まで手つかずだったので
野薔薇や葦が生い茂り、ランダムに木が生えている。
歩けば野薔薇の棘が無造作に刺さり
「痛い、痛い」を連呼してしまう。
誰が捨てたか、古いバイクの残骸なども出てくる始末。

「どうしたもんか」と少々途方に暮れつつも、
夫は新品のチェーンソーを買ってきた。
新しいチェーンソーでバッタバッタと木を切る夫。
背中に「俺、強いぜっ!」という雰囲気を丸出しにして
木という木を滅多切りにしている。危険だ。
こうして、牛が通れるような道が出来れば
後は牛に野薔薇や萱を食べてもらって
牧草の種が入った糞を落としてもらい
数年後には美しい放牧地に大変身する予定なのだ。
Sさんのご厚意で、
突然ですが「開拓者・三谷の物語」の始まり始まり〜。