冬の到来

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きゅっと目をつむる。

身を縮めて小走りで帰って来る。

牛舎の中は、いくらか暖かい。

私と牛の共通点「寒いの苦手」

岩手の冬は、とにかく厳しくて、内臓が震える寒さだ。

牛は体も大きいし、体温も高めだし

なによりイギリス原産(冷涼なイメージ)という強みがありそうなものだけど

冷たい風の前では、私と同じ顔するから

愛しい。

長い冬が始まって、

私も牛も、ちょっぴりブルーになっている。

この冬も一緒に乗り切ろうぜ!

 

6が好きか。

中学校2年生の長男は、正真正銘の理系脳の持ち主だ。

普段から「この子は三谷牧場は継がないだろうな」と

感じられる場面が多々あり、むしろ「継がせない方がいいぞ、これは・・」

なんて感じられる場面も多々ある。

小さな頃からモノづくりが好きで、レゴブロックなど

結構天才的なところがあるので、適性のある方へ進んで欲しいと

思っている。

そんな長男が、突然こんな事を話し始めた。

「お母さん、6ってさ、いいよね~💛」

ん?なに?何が?

「いや~、だからさ、6って数字は、なんかこう・・魅力的だよね!」

若干興奮して話し続ける息子を

不覚にも奇異の目で見てしまい「いかん、いかん。」と思い直す。

「6のどこがいいの?」

「え!?だってさ、貫禄もあるし、割り算していく事を考えると

 潔い感じもあるじゃん?僕はね、案外3が嫌いなんだ。お母さんは何がいい?」

「え、え、う~んと。。。4」

「あ~!4っかあ~!そっか~!」

この一連の会話をもってして、この子はいつか牧場を巣立ち

どこかで理系脳をフル回転させて生きていくのだろうと知れた。

ちなみに、長男は

「僕ね、放物線ってロマンチックで好きだな~」とも語っている。

長男には世界はどんなふうに見えているのかな~?

面白い脳みそしてる。

長男はきっと、牧場も牛も、ヨーグルトも数字で置き換えられるに違いない。

私は数字の何かな~?

Bean47受賞しました

全日本・食学会の上柿元シェフから突然お電話をいただいた。

「お~ひさしぶり~で~す!」

上柿元シェフは、フランス料理界の重鎮である。

我が家が金のヨーグルトを作り始めた時に、ひょんな事から

お知り合いになり、今までずっと、気にかけてもらっている。

大好きな方の1人だ。

とにかく、上柿元シェフが大好きなのだ。

料理界のレジェンドなのに、ものすっごく、気さくで、朗らかで、

我が家の子供達は、このレジェンドの双肩に

「うんこ~!うんこ~!」と叫びながら飛び乗った事がある。

その時も「よかよ~!わははは!」と笑い飛ばして下さった。

お会いすると元気が出る、太陽みたいなお人柄だ。

そんな方からの突然のお電話。

もう、それだけで舞い上がる程に嬉しいのに、

今回はさらに嬉しい出来事が・・。

2019・全日本食学会生産者大賞「Bean47」に選出されたというではありませんか!?

生産者、料理人、流通関係者、食に関する機械技術者、食関連の研究者などの新たな活動・技術・人材の発掘・支援を目的とした賞だそうな。

上柿元シェフのご推薦により、我が家が全国から選ばれた9名のうちの1人となったのでした。

そんな事で、豆のマークが入っている表彰状を頂いた。

誉です。今までジャージー牛の「いいところ」を大切にして酪農を経営していこうと

地味にやってきた事を表彰して下さったのだ。

三谷家の体の中を通る1本筋にぶれが出ないように、これからもますます頑張ろうという気持ちだ。表彰状を手にする夫は、これ以上あげれません!というくらい口角を上げて笑顔である。喜びが溢れ出ている。

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でも、何よりも嬉しかったのは、やっぱり

上柿元シェフのお声が聞けたことなんだよな。

「元気でやってますか~!?」との問いに

「たった今!めっちゃ元気になりました!」とお答えした次第でした。

才能がなくたって!

昨今の和牛ブームで、和牛子牛が不足しているそうで

我が家のジャージー牛に「100%和牛受精卵」を人工授精している。

ジャージーママから黒毛和牛の子牛が生まれる。

イギリス人から日本人が生まれたよ~、みたいな不思議な違和感が

感じられるが、全農さんからのご依頼によるものである。

生まれた和牛子牛は、生後10日ほどで全農さんが引き取りにいらっしゃるので

我が家とは、ほんの僅かなお付き合いとなる。

10日ほどのお付き合いとはいえ、哺乳したりなど、お世話するのだけれど、

今回生まれた和牛ちゃんは、今までに無いパターンの子だった。

生まれて30分も経たないうちに

ぶるぶると4本の足で地面を掴むように立ち上がり

どっかん、どっかんと子牛部屋の壁に体当たりして

「な、なんだコイツは~~!?」と驚愕した。

パワフル!パワフルすぎる!部屋が壊れる、ドリフのように!!

 そして、母牛が1番最初に出してくれる

「初乳」を飲ませてあげようとした。

通常の牛乳とは明らかに異なる黄身色のトロリとした初乳。

これには母牛から子牛への最初のプレゼントである免疫力が詰まっていて

出来ることなら生後1時間以内に、必ず飲まないといけないのだ。

「よ~し、よし。ほ~ら初乳だよ~」

普通、生まれたばかりでも、子牛は本能で初乳に食いついてくるのだが

この和牛ちゃんは、あっちこっち顔をふらつかせて

ちっとも喜んでいないみたい。

それっと口の中に半ば無理やり哺乳瓶を突っ込めば、気が付いて飲むかと思えば

ちゅ~ちゅ~ちゅっ!ぼえええええ~~~!!

と大袈裟に横を向いてしまう。

何度やっても「ぶへえええええ~~~!!」とそっぽを向く。

う~ん、なぜだろう??

あんなに「暴れる君」だったのに、お腹が空いていないのかな・・?

以前、先天的障害があって肛門が開いていなくて、お乳を飲めずに

死んでしまった子牛がいると聞いたことがあるけれど・・・それかなあ・・?

しかしながら、翌日にはちゃんと立派なう〇こが発見された。

目が見えない?もしかして?

しかしながら、目の前で手をヒラヒラ振ったところ

これまた大袈裟にも程があるくらいドンガラガッシャ~ン!と飛び退いてみせた。

う~ん、なんだこの子は・・?

それから毎朝晩1時間弱かかって和牛子牛ちゃんにミルクを飲ませた。

飲むというか、偶然流し込むというか、

チュウチュウと吸い付いている割には、全然飲めていない。

そのうち「ぶへえへへえへっへ~!!!」と横を向く。

飲んでもらわないと、衰弱してしまう。

哺乳瓶と和牛ちゃんの首根っこを掴んで

曲芸師のように「ぶへええ!」と横を向くのに合わせて哺乳瓶を

操縦する。「よっ!」「ほいっ!」「そらきたっ!」と

子牛と共にクネクネ動き回る日々。

そのうち、和牛子牛ちゃんの「飲み方」が少しづづ上手くなってきた。

お腹は空いているらしいが、上手く飲めない。

つまり・・「へたくそ」なだけだったのだ。

おっぱいを飲むのが下手って、あるんだな~。

そんな事でいいのかな~。

必死な顔して、効率悪く吸い付き

思っているよりもミルクをゲットできず、

さらに神経質な性格が重なり

「ぶべべべぼへえええ~~!」と横を向く。

でも、まあ、それでも日々進歩していってる。

ちょこっとづつ、上手くなってる。

才能が無くても、必死にトライする姿に

なんか、私の方が「頑張ろう!」って気になるんだよな~。

 

 

我が家で生まれ育ち、子を産み、乳牛として

頑張ってくれていた「巻き爪ちゃん」が、

約半年前に、その名前の通り、巻き爪で足が悪くなり

三谷牧場の乳牛お母さんを卒業し、

雫石の中屋敷牧場さんで再肥育してもらい

この度「巻き爪ちゃんのお肉」となった。

それを、肉の卸専門の荻澤さんが、

「ちゃんと、大事にお料理してくれるシェフと、

そのお料理をちゃんと召し上がって下さるお客様がいるお店」へ配送してくれた。

そして、巻き爪ちゃんがたどり着いたお店が

「パッソ ア パッソ」の有馬シェフの所だった。

東京都門前中町の心がこもった素敵なお店だ。

有馬シェフが

「僕は、このお肉が生前はどんな場所で育ち、何を食べて、どんなふうに暮らしてきた

 のか、そんな事を考えながら、巻き爪ちゃんを考えながら料理する。

 僕の仕事は、この子に最大限の敬意を払って、美味しい料理にして、

 食べてくれる人に幸せと、巻き爪ちゃんを届けることだ」

と、おっしゃった。

巻き爪ちゃんは「生きていた」のだ。

半年前まで、私の目の前で、ヒョコヒョコと巻き爪足をかばいながら

お山を登っていたんだ。

だから、有馬シェフのこのお言葉が本当にありがたかった。

東京って、すごくバッチリ決まり過ぎていて、

かっこよすぎて、きっとお皿の上のお肉が

巻き爪ちゃんという牛だった事に、気が付きにくい街だから

有馬シェフのような気持ちをお持ちの方にお料理してもらう事が

今の私に出来る最良のお葬式なのだった。

お料理に出てきた、すね肉の煮込み料理には

あの「巻き爪」で苦しんでいたであろう、足の骨が付いていた。

それを持ち帰り、三谷家の子供達に見せた。

「巻き爪ちゃんの骨、巻き爪ちゃんを覚えてるよね?」

「うん。山登るの下手な子。これ、巻き爪ちゃんの骨?僕、牧場に埋葬してやろう。」

「どこに?山の上がいいかな?」

「いや、あそこは、あんまり牛達が来ないから、きっと寂しいよ。」

「じゃあ、栗の木の下は?」

「う~ん、あそこは、栗のイガが落ちてきて、きっと痛いよ。

 よ~く考えて埋めてあげるの。喜びそうな場所!」

 

牛はみんな、シンプルに生きていると思う。

欲張りさんがいない。ずるい奴がいない。いじわるはちょっといるけど、

いじめに悩んでいる子はいない。

皆、草を食み、子を産み、お乳を出し、

三谷家を思いやってくれて、ひたすらに美しい。

 

ねえ、巻き爪ちゃんはどこがいいかな?

優しい巻き爪ちゃん、今まで本当にありがとう。

 

 

でっかい!

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「この世に虻さえいなければ・・。」

牧場を始めてから、何度となくつぶやいた言葉である。

ここ奥中山の程よい水辺と清浄な土壌が

弾丸吸血鬼・虻を大量発生させるのだ。

炎天下の牧草地に、牛達が出ていこうものなら

シュッシュシュッ!!!と黒豆ほどの

礫が四方八方から飛んできて

牛達(特に黒っぽい子)は

きゃーきゃー言って逃げ惑い、

柔らかい乳房をブチブチ刺される。

かたや虻は吸血してぷっくり太り、なお吸血しにリターンしてくる。

もう、その様子はまさに阿鼻叫喚。

「た~すけて~~~~!!」と

牛達はダッシュで牛舎に戻ってきて

蒸し暑い舎内で虻からの襲撃を少しでも避けようと

身を寄せ合うのである。

そして、今度は「暑い・・・」と

文句を言い始めるのだ。

そこで、数年前からこういった状況になった場合の

対策として「でっかい扇風機」を取り付けた。

牛達は涼がとれるし、しつこく牛舎に飛び込んできた虻は

送風でバランスをくずし、上手く狙いを定められなくなる。

今年はさらに、もう1個追加で取り付けたぞ!

年々暑さが増すような気がするので、

牛達のご要望にお応えして、牛舎天井に3台!

スイッチオンすれば、

そよそよ~なんてもんじゃない、

ぼ~ぼ~と突風が吹き抜け、にっくき虻達さようなら!

グルグル回転翼!ジェット機並みです!

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2019放牧開始!

長らくブログをお休みしておりました。

なぜでしょうか?

1日24時間という事ですが、足りませんでした。(24時間もあるのか疑う)

つまり、ブログにまで手が回らなかったのです。

それがこの度、この中途半端な時期に「再開」しようと思ったのは

なぜでしょうか?

それは、うちの牛達があまりに可愛く、そして、一緒にいられる時間の刹那を

ブログというカタチで記録しておこうと

ぼ~んやりと思い立ったからです。

ゆっくり立ち上がった「思い」なので、

もしかしたら、いつの間にかまた座り込んでぐ~ぐ~寝てるかもしれません。

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という事で、再開ブログのスタートには

やはり「放牧はじめ」がふさわしいのです。2019年5月4日

冬の間ずっと牛舎に籠っていた牛達は

新緑の放牧地に一斉に解き放たれました!

首輪の鎖を外してもらうと、

長らくお待たせしていた「新緑」をめがけて

牛達はドドド~!!!!っと牛舎のコンクリートの床を削るように

我先にと、外へ飛び出して行きました。

その際、毎年、必ず、

「大ちゃん」という牛は、コケるのです。

今年も「大ちゃん、気を付けてね~・・」とハラハラして見ておりましたところ

見事な横滑りをして、ズッコ~ンと、

横向きに倒れてしまいました。

「ああ!やっぱり!(大ちゃんだ)」とヒヤッとしましたが

そこは慣れたもので、

よっこらしょ、と立ち上がり

「何もありませんでした」という平然とした顔で

テケテケと出ていきました。

今年は快晴続きでしたので、牧草は光合成をたっぷりして

待っていてくれたのだと思います。

とびきり美味しい青草だったのでしょう。

牛達は走り回るのもそこそこに

すぐに大地にかぶりつき、

モグモグと草を食み始めました。

おかげで今年はケンカがあまり起こらず

なんとも平和な「食の祭典」となりました。

牛達の嬉しそうな顔、食べ放題のお店にいる子供みたい。