Kじいと妻

ご近所の「Kじい」には、我が家が乳製品製造販売を
始めた頃から、様々お世話になっている。
我が家にとっては欠かせない
「困った時のKじい」である。
先日も、Kじいには大変お世話になった。
その日は、近場で用事があり、鍵を持たずに出掛けた。
そしたら、その間に夫がちゃんと戸締りをして出掛けてしまったのだ。
「しまったああ!」と思ったところで、仕方が無い。
ゆっくり待つとしよう。
と自宅前で2時間ほどまどろんでいた。
「それにしても、遅いな〜、帰って来ないぞ〜」と怪しみ始めたその時、
夫から、えらく慌てフタメイタ電話がやって来た。
「カバンを盗まれたらしい!ちょっと帰るの遅くなるよ!」
との事・・・。
「・・・え?じゃあ、鍵は??」
慌てフタメタ電話は慌てフタメイタまま、一方的に切られてしまった。
これって・・・
鍵を失くした夫婦ってことかな?
次第に自宅前の妻も慌てフタメキ始める。
そして・・・
「K、K、Kじい〜〜〜〜〜!!!助けてえええ〜〜〜〜!!!」
と「困った時のKじい」に援助要請したのだった。
Kじいはすぐにやって来てくれて、
戸締り忘れが無いか、一通り調べて
「ちぇっ!タケちゃんめ、しっかり閉めてやがるな」と言った。
「そうなんスよ!タケちゃんめ、今日に限って完璧でやんす!」
まるで子分のように振舞う妻。
そして2人は、家の窓枠の隙間から定規を差し込んで
鍵を開けてみよう、とか、安全ピンで鍵穴をほじくってみたり、など
漫画で見たことがある技を全て試してみたが、
エクセルハウジングが建ててくれた我が家は、
二枚貝のようにピッタリと閉じたままだ。
「さすが、最近の家は手強いなぁ。」Kじいが毒づく。
「そっすネ、さすがエクセルさんの家っすネ」妻が追従する。
そして、とある戸口に的を絞り、
Kじいが渾身の力でガタガタ揺らし始めた。
揺らせば外れるかもしれない、という。
ガガガガガガン!ガガガガガガガガン!
「Kじい!小人が入れるくらいの隙間が開いてきたよ!!」
「よおお〜〜〜し!!!」
ガガガガガガガン!!ガン!ガン!ガン!ガン!
kじいは、まるで何かに憑かれたように
半分白目を剥いて、激しく体を動かしたが、
やはり扉は開かなかった。
当たり前だけど・・。
「こうなったら、窓を割るしか無い・・・。」
最終的に、凶暴な手段に出ようとしたその時に
「ちょっと、なにやってるの!?」と夫が帰って来た。
聞けば、カバンは失くしたけれど、鍵は失くしていないという。
「やれやれ・・・そっかぁ〜・・あ〜・・・。」
ホッとしつつも、ちょっぴり虚しい感じのkじいと妻。
何だか、うやむやな雰囲気で
この「即席怪盗軍団」はお開きとなったのだった。
ところで、鍵はあったが夫のカバンは未だ戻って来ない。
「カバンの中には何が入っていたの?」と聞くと
しょんぼり、俯いて
チョコボールとアイスのファミリーパックが2箱も・・・」と言う。
まるで小学生の持ち物だ。
盗んだ人は、心底ガッカリしただろう。
しかし、そのカバンは17歳の頃からの付き合いで
思い出もいっぱい詰まっていたそうだ。
できる事なら見つけ出してあげたい、と思う。
さらに夫言わく
「でもさ、今度またカバン買ったら、新しい思い出ですぐにいっぱいに
 なるんじゃない?
 kじいと雅子も、また、珍騒動やってたし。
 窓・・・割る前に帰って来れて、本当によかった・・・。」
と、再びしょんぼりと俯いてしまった。
なんか疲れているみたいだな、と思った。