オス子牛の現状

福島原発事故以来、
岩手の肉牛市場は振るわない状況が続く。
我が家のジャージー牛のオス子牛も
以前のようにはいかなくなって久しい。
先日も生まれて3ヶ月目にして
ようやっと市場で買い手がついたと思ったら
「販売価格1000円です。」という激安ぶり。
さらには、市場に売りに出したり、運搬してもらったりの
手数料を差し引くと・・逆にお金を支払わないといけないとの事だった。
「オスは生まれても赤字だ」
奥中山のジャージー農家は我が家を含め5戸。
皆の悩みの種となっている。
3ヶ月もの間ご飯を食べさせて、挙句に支払いまで発生しているのだから、
「経営」という側面から伺うと
かなり厳しい「オス子牛」という事だ。
こういう状況が1年以上続いて
最近では、生まれた子牛が「雄」だと分かると
首をひねって殺してしまう農家さんも出てきている。
これには、正直驚いた。
我が家は、未だに売れるまで飼育して赤字を被っているが
この行為にとても複雑な気持ちを持った。
農家さんとしては、経営していかなくてはならない。
農家さんご家族は食べていかなくてはならない、農家の気持ち。
だけど、「放射能騒ぎ」で売れないのが悪いのか、というと
それも違う。
5歳と7歳の子を持つ母として、健全な食生活を案じる、母の気持ち。
そして、生まれてきてくれた子牛は、外の光を一瞬でも
見たのだろうか。
その光は、美しかっただろうか。
生まれてきてはいけない、と言われてしまった
可哀想な雄子牛の気持ち。
自分は酪農家であり、母という消費者であり、母牛の代理人でもある。
そして、何も出来ずに現状の回復を待っているだけの人間でもあるのだ。
ただ、搾られた牛乳1滴の中には
「いのち」の絆があった事を思うのである。
そして、この現実を踏まえて食生活を見てほしいと願う。