奥中山はいいところだ

岩手県人は「日本一お人好し」だと言われている。
目立って怒ったり、騒いだりする事を好まないためか
たしかに穏やかというか、落ちついて見える。
少々押しが弱いようにとられる事もある。
しかし岩手暦10年目の妻は
「お人好し」という言葉よりも
岩手の方々には「人」という言葉がいいと思う。
先週の日曜日、妻も夫もヨーグルトの製造で
朝から昼過ぎまで工房に篭りきりだった。
子供達は退屈していた。
「まだ〜?まだ終わらない??」と工房のガラス戸にへばり付いて
不貞腐れていた。
そのうち、退屈しきって外へ遊びに行ってしまった。
さて、製造も終わり
子供達を呼びに外に出たが、誰もいない。
「お友達のお家に行ったかな〜?」と車で探しに行く事に。
ところが、お友達のお家にもいない。
近辺を車で探しているうちに、
Kジイにバッタリ会った。
「なに!?いない!?」
Kジイは、忘れ物をしたので取りに帰って来たくせに
「俺はこっちを探そう!」と忘れ物を忘れて捜索に加わってくれた。
2人で車でノロノロ探しているうちに
今度は大工の高橋さんの旦那さんがお散歩しているところ
「え!?子供がいなくなった!?」
と一緒に捜索してくれた。
そこへ今度はお買い物帰りの大工の高橋さんの奥様が
「大変だ!お母さんはもっと気が気でないっけね!」と
もっと遠くの方まで捜索に加わってくれた。
辺り一面雪で覆われている。
子供の足跡が牧場からペタペタと出て行き・・・
途中で途切れて無くなっている。
探せば探すほど、悪い妄想が頭をもたげて
皆の表情を強張らせた。
「いない・・・」
それでも皆、必死で探してくれた。
心当たりを訪ねては戻ってきて、また行って・・・
右往左往して時間ばかりが過ぎていく。
「どうしよう・・」
そんな時、大工じゃない高橋さんが
車に乗ってやって来た。
後ろには我が家の子供達が!
「いや〜、いきなり「遊ぼ〜!高橋さ〜ん!」って来たもんでね、
 俺の所は何も無いし、食べ物もね〜もんで、遊びに連れていって
 やってたのさ〜。」
という事で一件落着と相成った。
こうして「高橋子供誘拐事件」として
笑い話になってくれたが、焦ったのなんの。
同時に、このご近所の方々の温かみをヒシヒシと感じる
事件でした。
探すうちに、あれよあれよという間に
捜索隊の人数が増えて、皆本当に必死になってくれた。
そして、子供達の面倒を嫌な顔1つしないで
みてくれた、大工じゃない高橋さんも、
「ごめんよ〜。電話すればよかった〜。」と苦笑いしていたけど、
皆様の思いやりには感謝いっぱいだ。
助け合う。
思いやる。
「人」にしか出来ない、素敵な心を
岩手の方々は沢山もっていらっしゃると思った。
助けられてばっかりな三谷家でもある。