放牧解禁です!


今年も待ちに待った、この日を迎える事ができた。
放牧解禁日。
昨年は大震災直後で、福島原発の影響があるかもしれない
という事で、牛達は随分待たされた。
「今年こそは、お好きな時にどうぞ」
かと思いきや・・・・・
「県が実施する牧草の放射能検査を受けて、基準値以下ならば
 草の利用は可能ですが、もし基準値を超えた場合は自粛して下さい」
という通達が来た時は、牛と顔を見合わせて
ガックリと肩を落としたのだった。
検査は各農家さんを順番に回るという。
遅い!
検査結果は最低でも実施から1週間はかかるという。
遅い!
そして・・・もしも基準値を超えてしまったら・・・・・。
恐ろしい妄想で、頭が狂いそうだ!!!
病院の診察台に乗っかったまま
お医者さんが「う〜ん?う〜ん!」と言い続けているのを
ひたすら目で追っているような気分だ!!!
三谷家は美味しそうな青草を前にして
ヒトクチも食べる事が出来ない
哀れなわが子(牛)を慰める日々。
言いようの無い、申し訳なさを感じる。
そして、とうとう検査の日がやって来た。
検査は牧場の草を10箇所から満遍なく採取するという。
運命の日なのだ。牛の笑顔がかかっているんだ。
三谷は兼ねてから、小さな脳みそをクルクル回転させて
色々考えた。基準値を下回る為に、可能な限りの事をしたい。
そして、考えた挙句、起伏のある牧草地なのだから
尾根沿いの草には、放射能は溜まっていないだろう。
窪地などは、きっと淀んでいて、出やすかろう
というクルクル回転させた割には単純至極な結論に至っていた。
検査員の方がせっせと草を採取している。
その背後を三谷がピッタリ着いて回っている。
「いや〜、検査には草が3kg必要ですが、なかなか集まらないな〜。」
検査員の方達が緩やかな起伏を登りつつ
は〜は〜と肩で息をし始める。
背後の三谷は「しめた!今だ!」
と、練りに練った計画を実行に移す。
題して「X〜エックス〜計画」
検査員の背後から、とっても優しい声で
「あっちの尾根沿いに、草がいっぱいあるんですよ♪
 さあ、行きましょ♪行きましょ♪」
そっと背中を押すと、検査員達はフラフラと尾根沿いに誘われていった。
そして、青々と伸びる草達を見て
「おお〜!」と疲れきった顔をぱっと輝かせて
ムシムシと草を刈りだしたのだった。
作戦成功だ。
そんなこんなで、ちゃんと10箇所から採取したものの、
多くは(たぶん良さそうな)尾根沿いからの草を持って
検査員は帰っていった。
そして、待つ事1週間の後、検査結果がやって来たのだった。
「非検出ですので、どうぞ放牧して下さい」
というお電話を頂いた時の妻の喜びようったらなかった。
これで、牛達が美味しい草を食べれるんだ。
食いしん坊な妻には、牛の切ない気持ちが良く分かる。
よかった!!!!!
あんまり喜ぶものだから、
検査員の方も、何だかいい事した、みたいな口ぶりになっている。
X計画は見事成功したのだ!

雄大な牧草地を歩く牛は美しい。
自由を謳歌しているからだ。
これが見たくて酪農やってるんだよねって
夫は小さな目をもっと小さく細めた。
そんな夫を見れるのも、これまた特権のような気がする。
勝手にドタバタ劇だったが、何はともあれ
今年も一安心である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜告知〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5月26日(土)
盛岡市で六魂祭が開催されます。
MOSSビル前にて
三谷妻が「金の飲むヨーグルト」を販売致します。
東北6県の有名どころが大集合のお祭りなので、
ぜひお越し下さいませ。
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