奥田シェフ


先日、イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」の
オーナーシェフ・奥田シェフが我が家にいらっしゃいました。
奥田シェフは「地産地消」を代表する超有名カリスマシェフだ。
以前、何かの会で初めてお会いした時に
とっても緊張しながらご挨拶をさせて頂き、
その気さくな雰囲気に和みつつも、
「我が家の乳製品も食べてみてくれ」と半ば強引に送りつけた経緯があった。
それから約1年経ち、奥田シェフが岩手の食材を使った料理を
取材するという企画が持ち上がり
光栄な事に「三谷牧場のチーズ」をご指名下さったのだ。
そんなこんなで、牧場見学とチーズ作り体験が催されたのだった。
毎日超多忙な生活を送っていらっしゃる奥田シェフは
ちょっとお疲れ気味の顔でしたが、
牛達と触れ合うために、牧草地を登って行くと
山腹には我が家の牛達が黙々と草を食んでいる姿が・・・。
「おお!これが〜!」と、とても喜んで下さった。
「僕が始めて三谷さんの乳製品を食べたとき
 『健康な味』って感じたんです。これ、いいな〜って、素直に思った。」
と言いながら目を細めて牛達を眺めていらっしゃいました。
「綺麗な牛達ですね。」と誉めて下さると
夫が「うふふ!」と嬉しそうに笑った。
間もなく牛達は
奥田シェフに興味深々の様子を呈し始め、
ゾロゾロと囲み始めた。
そしてついにはすっかり取り囲まれて、
牛達の大きな頭で奥田シェフが揉みくちゃにされてしまった。
牛達は寛大な奥田シェフにすっかり甘えてスリスリしていたつもりだろうが
お疲れ気味の奥田シェフは、背中に頭突きされる度に
「はう!」と呻いて仰け反っておられました。
そして、チーズ作り体験では
モッツアレラチーズの成形を体験して頂きました。
チーズの素となる「カート」を熱湯の中で
ひたすら丸くするという作業で
夫はいつもこの作業を3時間程かけて行う。
だからチーズを作った後はいつも掌が軽く火傷している。
「熱いです。大変な作業です。だから、私はいつも
 子供達や家族の事とか考えながらやっております。
 これを食べて幸せを感じて欲しいから、作っている私が幸せを感じながら
作らないと駄目やと思うんです。私は、チーズを作っている時は
 好きな人達の事を考えながらやるようにっていうルール決めをしております。」という夫の説明を、奥田シェフが頷きながら熱心に聴いて
くれた事がとても嬉しかった。
夫の考え方に共感してくれていると思った。
そして奥田シェフが丸め始めた。
湯の中でコネコネしている奥田シェフの顔は真剣そのものだった。
コネコネ・・コネコネ・・コネコネ・・
そして・・・
出来上がったのは

「松茸型チーズ」だった。
「ぎゃははははっ!」思わずどっちゃらけてしまった。
奥田シェフは、流石だ。
大切な人を思って作って下さい、と言われて
「松茸」を作った人は始めてである。
この「松茸型チーズ」
見ていると、なんかニッコリ笑顔になってしまうのだ。

「岩手の食材」がテーマの今回の旅の最終目的地は
岩泉の松茸だ。
きっと明日は「松茸と松茸型チーズのほにゃらら」という
素晴らしいお料理が人々を魅了するに違いない。
奥田シェフは、見た目にも幸せを追求する
とってもユーモラスなお方でした。