除角。

牛は大人になれば角が生える。

男でも女でも立派な角が生える。

自然界では、強力な武器になるけれど、酪農界ではまさに凶器だ。

我家は放牧しているので、特に危険。

牛達は皆、仲良しだけど、たまには喧嘩もしている。

そんな時に、角があったらお互い大怪我し兼ねない・・とか

牛達は皆、人が好きだから、よくすり寄ってくるけれど、

たまに、行き過ぎた「愛」がさく裂して

殆ど体当たりしてくる事がある。

人は「ぐふっ!」と簡単に吹き飛ばされてしまう。

そんな時に、角があったら致命傷になり兼ねない・・とか。

諸々の都合から、我が家では子牛のうちに「除角~じょかく~」を施している。

これが「やりたくないお仕事ベスト5」に入る、嫌なお仕事なのだ。

子牛の頭には小さな丸い膨らみが2つある。

触るとコツっとしている。

これが「角の芽」で、これらを焼きコテで焼いてしまうのだ。

想像通り、すごい激痛で、大抵の子牛たちは

ひっくり返ってしまう。

しばらく呆然と横たわっている子もいる。

まるで拷問のようで、本当に必要な処置でなければ

ぜひとも、やりたくないのだけれど・・。

だけど、焼く際に、怖がって中途半端に痛い思いをさせると

大人になった時に中途半端な角が生えてしまう。

クルンと羊みたいに巻いた角や、ちょろっと真横を向いた角などで

やる時は、ぐっと一気にやってしまわないといけない。

「いざ、ごめん!」とこちらも覚悟を持って挑む。

除角を施された子牛たちは

暫くの間「人間不信」に陥るのが、また辛い。

頭に黒丸をこしらえた子牛たちは

人を見ると「しえー!!!!」と逃げ回るようになる。

2~3週間もすれば、また仲良くしてくれるようになるから

暫定的悪者なんだけれど、ホントにやりたくないお仕事である。