陸前高田から


荷物を開けた瞬間、
涙が溢れ出した。
「臼井さん・・・漁を再開したんだ・・!!!」
3月11日の津波で、
陸前高田市は壊滅的被害を受けた。
臼井さんはワカメ漁師さんだが、夏は網を挿して近海のお魚を捕っていた。
タナゴ、アイナメ、カレイ、シャケ・・
お魚屋さんにはあまり並ばないようなのも沢山あって、
それをよく「子供達に食べてもらいたいんだっけ」と
送ってくれていたのだが、
津波は臼井さんの大事な船をさらってしまった。
さらに、引き込まれた瓦礫が海の中を滅茶苦茶にしてしまったと
聞いていた。
「海には当分出られないよな〜・・・。」
と、悲しそうな臼井さんを、思い出す時がある。
それでも、あの時だって、臼井さんは前を向いていた。
「船は親戚が使ってないのを借りてきて、直してさ
 それでお父ちゃん、はりきってしまって〜。
 まだ機械は無いっけ、船さ陸に上げる時は、車で引っ張ったり
 すんだよ〜。
 海の中、無事だったす。
 小さいアワビとかいてさ、あなたも無事だったの〜なんて
 放してやったよ〜。あはは。」
嬉しそうにお話してくれる臼井さんに
東北人の強さを感じる。
100軒以上ある漁師さんの中で
漁を再開できたのは、まだたったの3軒。
当分は捕った魚は皆で分け合うそうだ。
「お父ちゃん、はしゃいじゃって〜」と
はしゃぐお母ちゃんが教えてくれた言葉。
「人間は誰だって強いんだ。いつだって、助け合えるんだ。」
ふと、三陸の海の水平線が心に浮かんだ。
お魚を見ながら、また涙が溢れた。