2020年11月4日

初雪です・・。

ちっとも嬉しくない。

猛暑だコロナだ大統領選だって、世の中騒がしいけれど

やっぱり来るものは来るんだな~・・・・。

雪かきや、家屋の破壊行為(雪による)や、冷え性を考えると

とても気が重い。

重い気持ちの時は牛舎へ行く。

そして、牛のお鼻の横にそっと触れる。

大きく澄んだ目をした牛が、撫でられるままにじっとしてくれる。

牛のお鼻の横の、柔らかくって、ちょうど良くあたたかくって

ふにゃふにゃした皮から、

指先に伝わってくる感触がたまらない。

「お鼻の横、最高~♡」

指の第二関節くらいまでの小さな箇所

最近見つけた、癒しスポットだ。

今年は、来る不毛の冬を、これで乗り切ろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

まみっこ

三谷牧場のご近所さん

「K田さん」「Kミさん」「Mギさん」「Kオさん」

そして「まみっこ」。

「まみっこ」はのんびり屋さんで、食いしん坊。

そろそろ、実りを迎える栗やドングリが大好きで、

一心不乱に拾ってモグモグ食べる。

うっかり見つかると、驚いて逃げようとするけれど、

「あっ、あと1個!」といって、少し逃げ出しかけた足を戻してまで

ササッと1粒くらい適当に咥えて

モタタタ~・・っと走って行く。

さらに、まみっこは、運動神経が鈍いらしい。

(本人は)猛ダッシュで逃げているが、とても遅い。

たまに、ぬかるんだ土を踏んでズコッとこけたりもする。

坂を駆け上がろうとして、ずり落ちてきた事もある。

 

そんな「まみっこ」に、また会った。

夜に車を走らせていた時の事だ。

道路の真ん中で「まみっこ」が鼻をスンスンさせながら歩いていた。

車に気が付いて「それ!逃げろ~」・・と思ったのはいいと思う。

しかし、道路をまっすぐ向こうに走って逃げる「まみっこ」。

いつまでたっても、車(私)の目の前を丸くてぷりぷりしたお尻が走る・・。

時速2km程で走る、車と「まみっこ」。

やがて「まみっこ」は口を大きく開けて

「ち・・ちょっと休憩ね・・はあはあ。」と立ち止まってしまった。

そして、ようやく道路わきへと逸れて行って

「さようなら。またね。」

 

今まで絶滅しなかったのが、不思議だな~。

もしかして「まみっこ」には何か特殊な才能があるのかもしれない・・?

岩手では「アナグマ」の事を「まみっこ」と言うそうだ。

「まみっこ」!

 

 

「アニマルさん」を全うするという事だ

我家で12年もの間頑張ってくれた「アニマルさん」が

雫石町中屋敷牧場で半年間の再肥育を経て

この度、お肉となって帰って来た。

帰って来たというと語弊があるかもしれない。

「アニマルさん」のお肉を

㈱宝山の荻澤さんが、信頼するシェフの元へ出荷し、

その一部を、三谷牧場にも届けてくれる。

「アニマルさんのご帰還です」という言葉を添えて

戻って来たお肉を見ると、ほんのりクリーム色の脂身を淵にまとった

深く重たい紅色の赤身肉で、それは噛むほどに味わいがあって

「12年生きてきた」そんな積み重ねをひしひしと感じるお肉だった。

12年もの間、色々あったもんね、アニマルさん!

沢山、優しい気持ちにしてもらった!

ハプニングもあった!

マロンが弱り切ったアニマルさんを踏んずけて

「う~ん・・」って、諦め顔だった時は、思わず笑っちゃったよ!

その後が凄かったよね!

アニマルさん、凄い根性見せて、み~んなびっくりだったよね!

我家で大活躍していた時のアニマルさんを思い出しながら

深紅のお肉を眺めると、何とも言えない気持ちにもなる。

だけど、皆様に「本当に美味しいです。アニマルさんありがとう」と

言って食べてもらう事で、きっとこれが集大成なんだと思う。

無下に捨てられたり、粗末に扱われたりする乳牛の末路だって

世の中にはあるのだ。

アニマルさんは、やり切ったのだ。

最後の最後まで、アニマルさんとして食べてもらう事で

アニマルさん人生(牛生)をやり遂げたのだ。

私は一昨日、アニマルさんのお肉をいただいた。

微塵も取りこぼさないように、しっかり噛みしめて食べた。

アニマルさんの根性が、私の中で息づきますように。

天国でアニマルさんが、他の誰かに

「君、前は何してたの?」と問われた時に

「アニマルさんだよ!」って自信たっぷりに答えてくれていたら

いいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

マルちゃん、また来てね。

あんなに強い子だったのに。

三谷家で一番の暴れん坊で、小さい時は水飲みバケツを5個も壊して

牛舎の壁にも3か所も穴を空けて・・。

長じてからは、意図的に人を蹴る唯一の牛になった、マルちゃん。

搾乳に入る前に、必ず、横目で様子を覗ってから

「今だ!」と鋭い一蹴を1度だけ浴びせてくる。

こちらだって、それなりに反応して

「それ来た!」とその一蹴をヒラリとかわす。

搾乳前の1度きりの、せめぎ合い。

そんな応酬に、いつも舌打ちしてから搾り始める・・。

二度と帰らぬ、あの日々を、今はひたすら懐かしく思う。

 

マルちゃんが、子牛を産んだのは今年の3月、

7時間に及ぶ難産の末に生んだ子は、滅多にないくらい大きな子牛だった。

マルちゃんは、それが原因で腰の神経を痛めてしまったらしく

後ろ足が伸び切って、力が入らなくなり、立てなくなってしまった。

その時は、まだマルちゃんの目はしっかりとしていて

立てないながらも、両隣の牛達を威嚇するほどだったので

「きっと、いずれ立てるようになる・・」と思ってた。

そう信じて、毎日2回、腰骨を挟んで滑車で上に引っ張り上げるように

立たせる訓練をしながら、後ろ足の回復を待ったけれど、

今度は前足にも力が入らなくなってしまい

マルちゃんの目には自信が見られなくなってしまった。

そして、とうとう精魂尽きたように死んでしまった・・。

プライドの高いマルちゃんだったから、吊り上げられるのが屈辱だったのだろうか・・。

痛くて、苦しくて、もう嫌になってしまったのだろうか・・。

後ろ足には、わずかに回復の兆しは見られたものの、結局

マルちゃんの精神力の方が先に尽きたみたいだった・・。

 

我家で乳牛としての道を全うさせてあげられなかった。

大きすぎる子牛を、産ませてしまった。

最後まで「ふん!」と、顔を斜めに構えていたマルちゃん。

再び大地を踏ませてあげられなかった。

搾乳の度に、とんでくるマルちゃんの足を思う。

3回に1回は蹴られて、呻いていた日々を思う。

「おい、マルよ~。もう一度、蹴ってくれよ~。」

マルちゃんの居なくなった牛床で、主人が呟いた。

 

マルちゃんの死から数か月が経つ。

このブログは、我が家の歴史を綴るものだ。

だからマルちゃんの死も、ちゃんと記録しなくてはならなかったのだけど

この数か月、どうしても、どうしても

書く気になれなかった。

自分達の力及ばずの結果を、素直に受け止めれなかった。

だけど、先日、マルちゃんの子供のチビマルちゃんが

双子の赤ちゃんを産んでくれた。

マルちゃんの血を引くチビマルちゃんが、双子を産んだ!

ああ、こうして、引き継がれていくんだな。

こうやって、生きていくんだな。

牛と共に生きているんだな。

そう思って、マルちゃんの死を受け止めた。

マルちゃんという、暴れん坊のかわいい奴がいたんだよって

ちゃんと、記録しなくちゃ。

次に繫がるために。

 

 

 

 

日本ミツバチ

最近、ポストを開けるたびに

お手紙の上に日本ミツバチがひっくり返っている・・。

今日も、ハガキの上で

小さな足を上に向けてジタバタしていた。

ぶぶぶぶぶ・・・!

そして、くるりとまるっこい背中を見せて

ふぅわぁ~・・と、綿毛のように飛んでいく。

いつの間にか、3~4匹の日本ミツバチ達が

周囲を飛び回っている。

攻撃してくるでもなく、何か困っているみたい。

よく見ると、ポストの中に日本ミツバチ達が巣を作っていた。

ちょうど、蓋の蝶番の所に作っているので

開閉するたびに、少し崩れてしまい、

その度にミツバチ達は、驚いてひっくり返っていたのだ。

巣を荒されたからといって、怒ることもなく

毎度毎度、おっとりと驚くだけ。

「誠に遺憾であります」と・・言ってる?もしかして。

何だか、日本的だな~。

実にのん気で平和的な日本ミツバチの気性に

少々、心配さえしてしまう。

(生き残っていけるのかな・・)

優しい日本ミツバチのお家。

もはやポストをいじる事は出来ない。

穏やかな暮らしを見守りたい。

ポストの横に、またポストを置いた。

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リモート・ワイン&チーズセミナー

外出自粛が続く中、

盛岡市在住のソムリエ・富士子さんが講師をお勤めのセミナーで

岩手県産のチーズを組み込むという形で予定されていた

「ワイン&チーズセミナーin盛岡」が開催できなくなった。

半年前から予定されていたもので、

三谷家は「チーズ生産者」として参加させて頂く予定だった。

それが、こうなり、どうしましょうとなった。

富士子さんは、とっても朗らかで、それでいて行動力に溢れた方だ。

そんな富士子さんは、タダでは引き下がらなかった。

「そうだ~!zoomでセミナーを開こうよ!!」

そう閃いてからの富士子さんの身のこなしは鮮やかで

あれよあれよ、という間に企画応募し、実現するに至ったのであった。

まず、富士子さんが厳選した岩手県紫波町・フルーツパークさんのワインと

我家の乳製品を参加者のご自宅に事前にお届けして

受け取った方に、ヨーグルトやチーズを好きなように調理してもらい

5月9日19時半には、ご自宅のPCの前にスタンバイしていただく。

時間になったら「zoom in!」

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PC画面いっぱいに広がる🔲。

そして、それぞれの🔲の中で、参加者さん達が

「こんな風に調理してみましたよ~」と手を振っている。

初めて味わう感覚に、少々戸惑ってしまった。

🔲の中には、各々の時間がゆったりと流れているけれど

PC画面では見事に共有されていて、確かに「集まっている」のだ。

コロナが無かったら、絶対に挑戦しなかった「zoom 」

こんな状況でも、やれる事があるって、すごい。

正直、どこを見てしゃべったら良いのか、

経験不足で、私の目は終始泳いでいたけれど

あたたかな充実感があった。

アナログ一徹な我家だったが、必死に皆様に食らいつき、

重ねて、紫波フルーツパークさんの白ワインもとても美味しく、

気が付けば軽く2時間、セミナーという名の「飲み会」は

無事に終了したのであった。

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2020放牧初めの日!

 

 

今年も放牧が始まった!

牛も三谷家も、待ちに待った、この日!

窮屈な牛舎暮らしから解放された瞬間、牛達の目がキラキラ輝き、

1年のうちで、1度しか、今日しか見られない大技

「喜びのハイジャンプ!」を披露してくれる!

牛達の全身から「ぃやっほお~~~い!」が聞こえてくる!!

激しい高揚感の中、

やはり今年も見事な「おとぼけさん」がいた・・。

それは10歳になる「静ちゃん」だ。

静ちゃんたら、「大ベテラン」なのに

牛舎で繋がれていた鎖を外してあげて

他の牛達が「いえーい!!」と喜び勇んで出ていく中で

静ちゃんだけが、「解き放たれた」という事に

全然気が付かず

「おおおお~~~!?(皆、どこ行くんだよ!?)」

「MOOOOOO!!(ノー!)」

声の限り、叫んでいた。

名前は「静」だけど

最大出力で、叫んでいた!!

「し、しずかちゃん!?あなたも行けるのだよ??」と

促してみたけど、一向に気づく事無く

「いやああ~~~!!置いて行かないでえええ~~~!!」と

激しく首だけを振る。これだけ首が振れれば、

鎖が繋がってないって事に、そろそろ気が付いても良さそうなものだけど。

「う~ん、こりゃ、もうろくしたな。」と、牛舎の天井を仰いでしまった。

牛舎の天井は低くて、抑圧されていた冬期間の苦労を思う。

「ダメだこりゃ。」と、おとぼけ静ちゃんは

放置して、牧草地で既に春を謳歌している子達の方に向かった。

本当に暫くして、静ちゃんがノコノコ出てきて

「あは!あは!」と駆け回る姿が見えた。

「はあ~、今年も無事に放牧が始まったな」と

再び天を仰いだ。

今度は晴天の青空が広がっていて

来る春の解放感をぞくぞく感じた。