今年も放牧が始まった!
牛も三谷家も、待ちに待った、この日!
窮屈な牛舎暮らしから解放された瞬間、牛達の目がキラキラ輝き、
1年のうちで、1度しか、今日しか見られない大技
「喜びのハイジャンプ!」を披露してくれる!
牛達の全身から「ぃやっほお~~~い!」が聞こえてくる!!
激しい高揚感の中、
やはり今年も見事な「おとぼけさん」がいた・・。
それは10歳になる「静ちゃん」だ。
静ちゃんたら、「大ベテラン」なのに
牛舎で繋がれていた鎖を外してあげて
他の牛達が「いえーい!!」と喜び勇んで出ていく中で
静ちゃんだけが、「解き放たれた」という事に
全然気が付かず
「おおおお~~~!?(皆、どこ行くんだよ!?)」
「MOOOOOO!!(ノー!)」
声の限り、叫んでいた。
名前は「静」だけど
最大出力で、叫んでいた!!
「し、しずかちゃん!?あなたも行けるのだよ??」と
促してみたけど、一向に気づく事無く
「いやああ~~~!!置いて行かないでえええ~~~!!」と
激しく首だけを振る。これだけ首が振れれば、
鎖が繋がってないって事に、そろそろ気が付いても良さそうなものだけど。
「う~ん、こりゃ、もうろくしたな。」と、牛舎の天井を仰いでしまった。
牛舎の天井は低くて、抑圧されていた冬期間の苦労を思う。
「ダメだこりゃ。」と、おとぼけ静ちゃんは
放置して、牧草地で既に春を謳歌している子達の方に向かった。
本当に暫くして、静ちゃんがノコノコ出てきて
「あは!あは!」と駆け回る姿が見えた。
「はあ~、今年も無事に放牧が始まったな」と
再び天を仰いだ。
今度は晴天の青空が広がっていて
来る春の解放感をぞくぞく感じた。