ケーキハウス・ツマガリのFさん


「三谷さ〜ん、すみません。
 御注文よろしいですかぁ・・?
 ホント、いつも急ですみません。明日着で、
 どうぞよろしくお願いしますゥ」
兵庫県甲陽園にある、
「ケーキハウス・ツマガリ」さんからの
御注文は、いつも、とても丁寧で謙虚である。
我が家の発注を担当して下さっている
Fさんは、実は青森県のご出身で
「今度、寄らせてもろうて、ええですか?」と
おっしゃっておられましたが、
なんと今日、御実家に帰られたらしいFさんが、
我が家にいらっしゃったのでした。
Fさんは、27歳。
お電話口から想像していたのは
「職人の世界でしっかり御経験を積まれた
 中堅どころ」というイメージでしたので、
もっと、年上の方だろうと思っておりましたが・・・。
ツマガリ」は特別なお菓子屋さんだ。
以前、夫が帰省した際に、この「ツマガリさん」に
お邪魔したのですが、
「あそこは、特別や。例えばバニラエッセンスとかいう やつを、バニラを仕入れて、自家製してるんやて!
 社長さんが、こんな原価かかる事は、他で真似しんや ろって、俺は馬鹿や〜とかおっしゃってたで。
 こだわりってのは、ああいうのを言うんねやな。」
と、尊敬を露にしていた。
確かに、ツマガリさんのお菓子は、特別美味しい。
さらに、
「なんか、工房にあったタッパーにな、「命」って
 書いてあった。」とか訳の分からない事を言っていたが、この度Fさんがいらっしゃって、その謎は解明した。
ツマガリさんでは、お菓子作りに失敗して、
「失敗したな」とは、怒られない。
「お前、この食材を作ってくれてる人が、どんだけ
 苦労したか、分かるか!?それを何で、お前が
 台無しにすんねん!」と怒られるそうです。
お菓子の技術だけじゃない、心の技をも伝承するお店である。
タッパーに書いてあった「命」は、津曲社長が
ある日プラリと工房にやって来て、
お筆で一筆「命」と書されたそうです。
この「真心」を見事に伝承されてFさんは、
若干27歳ですが、本当に人間味の濃い
素晴らしい職人さんになられたのでした。
日頃の妻の稚拙さを思うと、Fさんを年上だと勘違いしたのも、大いに頷ける。
生産者と製造者。
切っても切れないこのご縁。
どれもが、1番大切で、そして、最高のモノが
出来上がる。
こんなに単純で大切な事を、今日は改めて感じました。
だから、今日は
物凄く、気分が良い。