熊ちゃんと熊さん

奥中山は自然に囲まれた素晴らしいところだ。
特にこの季節は、清らかな雪解けのせせらぎが
あちらこちらで輝き、フキノトウを先頭に
山々が色づき始め、お散歩にはもってこい!になる。
「さあ、出かけよう!」と思う。
ところが、この辺りには昔から「熊」が出没するそうで、
春の徘徊と同時に派出所のおまわりさんが
パトカーで町中をウロウロして
歩いている人間を発見すると
ソッと近づいて「熊が出ます!お気をつけ下さい!」と
かっこよくおっしゃって、去って行くのだ。
そうか、気をつけなくては!と素直に身構えているお陰か
未だに熊に遭遇した事はない。
熊がいるのは確かだそうだ。
たまに、熊があんまり可愛いから捕まえてやろうと思った
人が逆に襲われた、とか
熊と喧嘩して勝ったという話を聞く。
「熊はどこにいるのでしょうか?」
先日、この地区の春の総会に参加した時に
先祖代々からここに住んでいる方々に尋ねてみた。
すると、会長さんが
「ほれ!あの!」と鬼気迫る様相で答えて下さった。
(・・ご存知なんだ)
「ほれ!熊はな、熊ちゃん(熊坂さん)のお家の裏山辺りにいるんだあ!」
という回答に、何かホノボノとしたものを感じてしまった。
そういえば以前、「熊ちゃんの後ろを熊が歩いていたっけ〜!」と
センセーショナルな話題になっていた事を思い出した。
今度は「熊ちゃんの裏が熊さん」なんて
面白い。
熊ちゃんは今、病院で療養中だ。
きっと熊さんも心配して淋しい思いをしている事だろう。
熊ちゃん、早く良くなって下さいね。