「そうだ、穴を掘ろう」
唐突に思い立ち、車庫の後ろ側を掘り始めたのは
昨年秋ごろだった。
コロナ禍で、他に何するでも無いという状況だったので
せっかくなら、有意義な事をしたいと思ったのだ。
有意義な事・・・。
穴は貯蔵庫になる。熟成庫になる。
夢を膨らませて掘り進めたけれど
土質がポロポロしていて、上から土が崩れてきて
想像以上に、なかなか大変な作業だった。
ひいこら、ひいこら、夫と二人で掘り続け
ようやく幅1m程の空洞を完成させた。
そして「ここを雪むろにするぞ!」と
るんるん♪でジャガイモと大根を収納した。
雪むろの中で野菜が糖度を増し、とびきり美味しい芋と大根になって、
我が家の食卓を飾ってくれるだろう・・と
なんて有意義な事をしているのだろうか、と思ったのに。
すっかり、その存在を忘れて過ごす事、半年。
「そうだ!我らが雪むろのお野菜はどうなっているかしらん♪」と
掘り返してみた。
お野菜の姿は、どこにも見当たらなかった。
どうやら、土に還ってしまったようだ・・。
土の一部に、やや「ナメクジ」のような、ねちょっとした部分が発見された。
「ああ・・きっとこれ、ジャガイモと大根だったんだ・・。」
地道に掘った穴は、完全に崩れて塞がっていた。
ドンマイ!って自分に言ってあげる事にした。