長い冬ごもり生活も、あと1か月ほどで終了だ。
奥中山の桜はまだ、ウンともスンとも言わず、
小ちゃな蕾は沈黙状態だけど、
それでも春は近い。
風がほわっといい匂い。
そんな春風に刺激されたのだろう。
冬の牛舎生活は「寝る→起きる→食べる→寝る」という
誠に単調な生活で、牛達もすっかり退屈していたみたい。
「ちび」という若い牛が、困った遊びを思いついてしまった。
「ちび」は足元に這わせているゴム管を
つま先でツンツンと突いたり、ゴシゴシと擦ったりして暇を潰し始めたのだ。
そして、とうとうゴム管が裂けて、水が噴き出すという事件となった。
「ちび」の目の前に、即席の噴水がぴ~っと一筋、吹きあがっていた。
ふわふわと心地よい春風がそよぐたびに
「ちび」の心はうずうずと振動する。
「あ~、お外で遊びたいな~」って、大きな目で牧草地を見る。
牧草地にはまだ、生き残りの雪塊が点在している。しつこいな。
早く広い牧草地の上を、思い切り走り回らせてあげたいな。
春はゆっくり近づいて来る。