マップとオージー

お母さんが一緒。

お父さんも一緒。

だから姉妹で、

だからっていう訳ではないだろうけど、

2頭ともジャージー牛では珍しく、白茶のまだら模様。

マップが生まれた時は

初めて見る白茶のコントラストに見とれて、

小さな横腹をゴシゴシ拭きながら

まるで世界地図を広げているようだなって思って

それで、マップと名付けた。

オージーが生まれた時は

「今度生まれてくる子は、牛床に空きが無いから

 雌であっても、家には置いておけないからな!」と

断言していたのに、

やっぱり、その白茶のコントラストに悩殺されて

「え~、今日生まれた子牛は~、我家で頑張ってもらう事にしました~」と

電光石火の掌返し!で、三谷家の仲間になった。

あんまり鮮やかな掌返しで、笑ってしまった。

そして、ヨーグルトの定期便のお客様が

オーストラリア大陸みたいな柄ですから、オージーという名前はいかがでしょう?」と言って、素晴らしい名前を付けて下さった。

マップもオージーも、その特別な容姿と

気高くもチャーミングな瞳で、

長らく「三谷家の姫」として君臨していた。

けれど、どうやら、この姉妹は遺伝的に受胎しにくいようで

2頭とも、なんだかんだ言って2年も空胎で

子を産まないから、どんどん搾れなくなって

要するにに経営的にはお荷物になってしまった。

そして、とうとう手放す決断をするに至った・・。

雫石の中屋敷さんが、大きなトラックで2頭を引き取りに来た日・・。

前々から覚悟していた事なのに、その日は突然やって来たように思えた。

マップもオージーも、トラックに載せられたところで

「いやだよ!帰る!」と言って、牛舎に引き返そうとしていたけれど、

ロープで括られていて、思うようにいかなくて

じっと私をみつめた。

中屋敷さんの所に行くのなら、それが1番なのよ」って思ったけど、

マップとオージーには、言わなかった。

2頭がいなくなった牛舎は、酷くスッキリしてしまった。

もう世界地図もオーストラリア大陸も、ない。

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