スーパー赤ちゃん

スーパー赤ちゃんが生まれました。
我が家の牛達は、どの子も皆「スーパー」だけど・・。
あの日は、ちょうどヨーグルト製造日で
母牛が産みそうな雰囲気を出していたけれど
工房の中から「頑張ってね〜」と応援するのが精いっぱいだった。
ヨーグルト作りが終わって、
「さあ、無事に生まれているだろう!」と
牛舎に駆け付けたのは、
恐らく出産後2時間は経過した頃だったと思う。
蒸し暑い牛舎には、今しがた大仕事を終えたばかりの
母牛が独りのっそりと立って、モグモグ草を食べていた。
よし、まず母牛は元気そうだ。
子牛は・・?
母牛の後ろ側を丹念に見渡したが、子牛の姿はなかった。
もう一度、もっとゆっくり、
牛舎中を眺めてみたが、やっぱり、いないのだ。
そこで初めて「あれ?」と一言つぶやいた。
一輪車の後ろとか、堆肥の中とか、一通り探した。
そして、「いない・・・グスン。」と、遠くの空を見た。
すると牧草地の真ん中にカラスの黒だかりが。
よくよく見ると、
カラスの黒い輪っかの中に
ポツンと座る子牛と、イチっぽい姿があった。
ちょっと意味が解らない!と思いつつも
牧草地の坂を駆け上がってみると、
カラスの群れは、ぱあ〜っと飛び立ち
やっぱり、そこには子牛とイチがいた。
子牛が生まれた時に、我が家の牛達の中でも
特に母性が強い「イチ」が居合わせて、
丁寧に舐めて介抱してあげたのだろう。
そして、再び牧草を食べに山を登っていった
イチの後を、子牛が生まれたばかりの
たどたどしい足で、健気にもついて行ったのだと思う。
だけど、外にはヤンキーカラスが沢山いて、
小さな子牛などは、格好の悪戯の標的にされてしまう。
特に目や肛門など柔らかい部分をつついたり、悪質な悪戯をされる事もあるのだ。
よそ者のヤンキーカラス軍団に囲まれてしまった
子牛を、再びイチが守っていたのだろう。
子牛を抱き上げて牛舎に連れて行くと、
イチは何事もなかったように
草を食べ始めた。
生後2時間で、山登りしちゃった子牛は
まさに「スーパー赤ちゃん」である。
また、素晴らしい母性を発揮した
「イチ」は、やっぱり我が家の「一番」なのである。