牛飼いとは・・?

生き物を相手にするのだから、
牧場の仕事って
「ハプニング対応の仕事」とも言える。
毎日、朝晩搾乳の時間になれば
牧草地で過ごしていた牛達が
「搾る時間?」と、
イソイソ、ワラワラと牛舎に帰って来る。
「あまりに牧草が美味しくって止まらない」という時や
牧草地でうっかりお産を初めてしまった時は
別として、大抵必ず全員戻ってくる。
ところが、この前は「イチノコ」が戻って来なかった。
最近は雨が足りなくて、牧草も思うようには伸びていない。
「イチノコ」のお産が近いという話もない。
しかし「イチノコ」だけ、戻っていない。
「なぜじゃ!?」
不安がモクモクと湧き上がって来た。
事故?事件?何?どうして?
モクモクモク・・・。
そして、慌てて捜索に出かけたのだが
なんと、ビックリ!
「イチノコ」は山葡萄のツルに絡まって
身動きが出来ず、孤独な顔をして立っていたのだった。
「・・・え〜・・・」思わず微妙な奇声を上げた。
すると「イチノコ」は「ひひ〜ん・・」と悲しそ〜うな声を出して鳴いたのだった。
大きな瞳が一層うるんでいたようだった。
ちょうどたすき掛けのような恰好になってしまった
「イチノコ」は木々の間で押すも引くも出来なくなったのだ。
牛って頭いいけど、こんな些細な事で動けなくなるんだ〜と、
ツルをヒョイッと外してやると
妙に悠然と牛舎へ歩いていく「イチノコ」であった。
それにしても、どうやったら
山葡萄でたすき掛けなんて器用な絡まり方が
できるのかしら?
牛飼いは「謎飼い」でもあります。