まるちゃんとユキ



今年の春に生まれた2頭の雌子牛、
名前は「まるちゃん」と「ユキ」。
「まるちゃん」は、額に白丸の模様があったので
生まれてすぐに「まるちゃんだ!」と名づけられた。
「ユキ」は生まれた時に次男が介抱して、
「雪の日に生まれたから、ユキ!」と名づけた。
雪の日に生まれて「ユキ」なら、我が家の牛はほぼ「ユキ」じゃないか
と思ったけれど、「ユキ」は次男のお気に入りになった。
牛は十人十色で、顔も模様も性格も皆それぞれだ。
「まるちゃん」は、ちょっと神経質なハニカミ屋さんで、
「ユキ」は人懐っこくて、愛想好し。
そんな2頭が、最近になって
ようやく子供部屋を出て遊ぶようになった。
初めて扉を開いて
「出ていいよ。出たがってたじゃない。」と言うと
「まるちゃん」はモジモジして、顔をそっと出して
辺りを伺っていたが、お尻を軽くポンと叩いたら
びょ〜ん!と勢いよく飛び出した!
そして、牛舎の奥まで猛烈ダッシュをして
行き止まりにオロオロしていた。
「どこまでハニカミ屋さんなんだろうか・・。」
そんな「まるちゃん」を見ていると少々、トホホな気持ちになった。
「ユキ」は「まるちゃん」が慣れてから
出してみた。もしも一遍に2頭出したら・・・
花火を2つ牛舎に放つようなものだ。
滅茶苦茶にされてしまう!
「ユキ」もやっぱりモジモジしてなかなか出ようとしなかった。
そこに「まるちゃん」がやって来て
鼻先と鼻先をチョコンとくっつけてニコニコしていた。
会話しているみたいだった。

やがて「ユキ」が恐る恐る1歩踏み出した。
「まるちゃん」は注意深く「ユキ」を見ていた。
そして、2頭揃って牛舎の中を走り回った。
同期生になるこの2頭は
こうやっていつまでも助け合って生きていくのかな〜って
ちょっと感動した。
いつか大人達と同じ群れに仲間入りしても
「鼻と鼻の会話」で何でも乗り越えていくのだろう。
気の向くままにとっ散らかされた草を掃きながら
「2頭いてよかったな・・」と呟いた。