出産の話


1週間程前、牛の出産があった。
出産は春先に集中させているものの、
2〜3頭は毎年、ちょこっと時期がづれる牛がいるものだ。
今回は、出産予定日2週間前の牛で
放牧中に独りで産み落としていた。
その日はヨーグルトの製造日で、
草地で「母子」が睦まじく並んでいる姿を遠目で見て
「なんだろ、あそこのちっちゃい黒いヤツ。
 野犬〜?いやいや、産まれてるううう〜〜〜!!」と言った
具合だった。
母は生まれた子を綺麗に舐めて、初乳を与え、
子は母の温もりを感じて、一生懸命に立っていた。
「母性の強い母やね。無理に引き離すより
 一緒にしておいた方が、反って安心やな。」


その日の夕方、冷たい雨が降り出した。

心配になって見に行ったら、
ちゃんと、母は子を連れて木陰に避難していたので、
子牛は雨にあたる事無く、やはり、睦まじく立っていた。
「さすが、母だよね。立派だよ!」
・・・その日の晩の事。
なぜか、母牛だけが牛舎に戻って来たのだ。
どこを見渡しても、子牛の姿が見えない。
母はケロリとした様子で搾乳されている。
「あれ!?子供は!?どうしたの!?」
と牛に問い詰めたトコロで、返事はない。
もしかしたら、溝にはまったり、川に落っこちたり
死んでしまったのだろうか・・・。
不安がよぎる。
次の朝、シトシト雨の中、夫も妻も必死で「子牛ちゃん」
の捜索をしたが・・・・
・・・見つからなかった・・・。
推測だけど、どこかに落ちたりして死んじゃって
それを、キツネか熊がお家に持って帰っちゃったんだろう、と・・・。
三谷家に暗い空気が漂う。
放任主義もここまでくれば、犯罪だ・・・」
「死体すら見つからないからな〜。和牛の種付けてたから、
 キツネのヤツ、今頃ウハウハやろうか・・・。熊かも・・。」
ところが、2日経った朝、
なんと母牛が子牛を連れて牛舎に戻ってきたのだ!!!

物凄い元気いっぱいの子牛!
「お前、死んだんじゃないのか!?」と思わず叫んだ。
同時に、涙が出てきた。
「お、お、おかえりいい〜〜・・・!!!」
って涙が出た。
近所のお爺さんに、この話をしたら
「母牛は、隠してたんだべ。昔はよくある話だったんだよ。
 人がどんだけ探したって、見つけれね〜トコに母は隠すっけよ。
 野生の動物ってそうだもんな。」
との事。
サバンナの動物がよく、そうしているように
我が家の牛も
「お母さんが戻ってくるまで待っててね。」と言ったのだろう。
そして子牛も
「お母さんじゃないヤツが来た!」と息を潜めていたのだろう。
我が家の牛達の素晴らしさを実感する出産だった。
「牛達」は飼育されているようで「生きている」のだ。
牛達に教えられる事は本当に多い。
我が家の牛達って、かっこいいな〜。

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