日本ミツバチ

最近、ポストを開けるたびに

お手紙の上に日本ミツバチがひっくり返っている・・。

今日も、ハガキの上で

小さな足を上に向けてジタバタしていた。

ぶぶぶぶぶ・・・!

そして、くるりとまるっこい背中を見せて

ふぅわぁ~・・と、綿毛のように飛んでいく。

いつの間にか、3~4匹の日本ミツバチ達が

周囲を飛び回っている。

攻撃してくるでもなく、何か困っているみたい。

よく見ると、ポストの中に日本ミツバチ達が巣を作っていた。

ちょうど、蓋の蝶番の所に作っているので

開閉するたびに、少し崩れてしまい、

その度にミツバチ達は、驚いてひっくり返っていたのだ。

巣を荒されたからといって、怒ることもなく

毎度毎度、おっとりと驚くだけ。

「誠に遺憾であります」と・・言ってる?もしかして。

何だか、日本的だな~。

実にのん気で平和的な日本ミツバチの気性に

少々、心配さえしてしまう。

(生き残っていけるのかな・・)

優しい日本ミツバチのお家。

もはやポストをいじる事は出来ない。

穏やかな暮らしを見守りたい。

ポストの横に、またポストを置いた。

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リモート・ワイン&チーズセミナー

外出自粛が続く中、

盛岡市在住のソムリエ・富士子さんが講師をお勤めのセミナーで

岩手県産のチーズを組み込むという形で予定されていた

「ワイン&チーズセミナーin盛岡」が開催できなくなった。

半年前から予定されていたもので、

三谷家は「チーズ生産者」として参加させて頂く予定だった。

それが、こうなり、どうしましょうとなった。

富士子さんは、とっても朗らかで、それでいて行動力に溢れた方だ。

そんな富士子さんは、タダでは引き下がらなかった。

「そうだ~!zoomでセミナーを開こうよ!!」

そう閃いてからの富士子さんの身のこなしは鮮やかで

あれよあれよ、という間に企画応募し、実現するに至ったのであった。

まず、富士子さんが厳選した岩手県紫波町・フルーツパークさんのワインと

我家の乳製品を参加者のご自宅に事前にお届けして

受け取った方に、ヨーグルトやチーズを好きなように調理してもらい

5月9日19時半には、ご自宅のPCの前にスタンバイしていただく。

時間になったら「zoom in!」

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PC画面いっぱいに広がる🔲。

そして、それぞれの🔲の中で、参加者さん達が

「こんな風に調理してみましたよ~」と手を振っている。

初めて味わう感覚に、少々戸惑ってしまった。

🔲の中には、各々の時間がゆったりと流れているけれど

PC画面では見事に共有されていて、確かに「集まっている」のだ。

コロナが無かったら、絶対に挑戦しなかった「zoom 」

こんな状況でも、やれる事があるって、すごい。

正直、どこを見てしゃべったら良いのか、

経験不足で、私の目は終始泳いでいたけれど

あたたかな充実感があった。

アナログ一徹な我家だったが、必死に皆様に食らいつき、

重ねて、紫波フルーツパークさんの白ワインもとても美味しく、

気が付けば軽く2時間、セミナーという名の「飲み会」は

無事に終了したのであった。

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2020放牧初めの日!

 

 

今年も放牧が始まった!

牛も三谷家も、待ちに待った、この日!

窮屈な牛舎暮らしから解放された瞬間、牛達の目がキラキラ輝き、

1年のうちで、1度しか、今日しか見られない大技

「喜びのハイジャンプ!」を披露してくれる!

牛達の全身から「ぃやっほお~~~い!」が聞こえてくる!!

激しい高揚感の中、

やはり今年も見事な「おとぼけさん」がいた・・。

それは10歳になる「静ちゃん」だ。

静ちゃんたら、「大ベテラン」なのに

牛舎で繋がれていた鎖を外してあげて

他の牛達が「いえーい!!」と喜び勇んで出ていく中で

静ちゃんだけが、「解き放たれた」という事に

全然気が付かず

「おおおお~~~!?(皆、どこ行くんだよ!?)」

「MOOOOOO!!(ノー!)」

声の限り、叫んでいた。

名前は「静」だけど

最大出力で、叫んでいた!!

「し、しずかちゃん!?あなたも行けるのだよ??」と

促してみたけど、一向に気づく事無く

「いやああ~~~!!置いて行かないでえええ~~~!!」と

激しく首だけを振る。これだけ首が振れれば、

鎖が繋がってないって事に、そろそろ気が付いても良さそうなものだけど。

「う~ん、こりゃ、もうろくしたな。」と、牛舎の天井を仰いでしまった。

牛舎の天井は低くて、抑圧されていた冬期間の苦労を思う。

「ダメだこりゃ。」と、おとぼけ静ちゃんは

放置して、牧草地で既に春を謳歌している子達の方に向かった。

本当に暫くして、静ちゃんがノコノコ出てきて

「あは!あは!」と駆け回る姿が見えた。

「はあ~、今年も無事に放牧が始まったな」と

再び天を仰いだ。

今度は晴天の青空が広がっていて

来る春の解放感をぞくぞく感じた。

 

新型コロナウイルスが猛威を振るっている。

あっという間に世界中を席捲してしまった。

世の中の動きが止まり、皆じっとしている。

そして、沢山の人々が逼迫していく。

当然ながら、我家も影響を受けて

「おいおい、どうすんのよ?」なんて

赤提灯の店で世間を憂うオヤジと同じセリフを

牛達に向かって言ってみたりする。

だけど、そんな中でも

「チーズやヨーグルト大変でしょ?買うよ!」と

声をかけてくれたり、

「牛乳が余ってるって聞いて、私、猛烈に牛乳飲んでるから!」と

報告してくれたりする。

なんだか、大変な時だからこそ、あたたかい気持ちに

なれる時がある。

私も、赤提灯のオヤジをやっている場合ではないのである。

 

もうすぐ、春の放牧が始まる。

毎年、放牧初めの日は、シェフやそのご家族などいらっしゃって

「放牧パーティー」のようになる。

その時に来てくれた子供達に

「チーズ作り体験」をさせてあげたら、

皆とっても面白がってくれたのを思い出した。

今年は誰も来れないから、子供達の歓声が牧場に響く事はない。

 

我家にできる事ってなんだろう??

チーズを丸めてはしゃぐ子供達の顔を(大人もはしゃいでいたな)

お出かけ出来ない子供達の浮かない顔を思い浮かべた。

そうだ、チーズ作り体験をお家で出来たら

ちょっとワクワクしてもらえるかも!?

チーズの感触とか、

オリジナルな形や味付けに走る「やってやったぜ!感」とか

つまみ食いする喜びとか、

牧場の青空の下ではないけれど、子供達の歓声が上がるかも・・。

上手くいっても、いかなくても、

手を動かすのは楽しい。

泥団子作るみたいに、チーズを丸めて笑ってほしいな。

 

そして、金のチーズの「チーズの素」を作ってみた。

金のチーズ作りは、約12時間かかるので

まさか最初から最後まで、という訳にはいかない。

殺菌→乳酸菌発酵→レンネット添加→成型→加塩

の各工程の待ち時間の長い事ったらない。

そこで、~レンネット添加、まで仕込んでおいて

子供達には丸めて味付けを体験してもらえるようにした。

 

今年の放牧パーティーに来れなくなった子供達の

顔を思い浮かべる。

あの子、眼鏡かけるようになったって言ってたな・・。

あの子はまだ、新幹線が好きなのかな?

・・・ついでに大人達の顔も思い浮かべた。

あの人、子供達を押しのけて、チーズ丸めしてたな・・。

 

お家で体験工房セット(モッツアレラチーズ)

期間限定(コロナ自粛中の間・・)ですが

http://mitani.pinoko.jp/taiken%20cheese%20set.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牛も美しい音が好きだった

三谷家は揃って音痴だ。

リズム感、音程共に、大幅に外れた鼻歌などは

ほぼ原形を留めないというか

何を唄っていたのやら自分でも分からなくなる程だ。

そんなだから、牛と共に暮らし始めて16年間

牛達にまともな音楽を聴かせた事がなかった。

そんな三谷牧場に、突如として現れたのが

「タオライアー奏者Nonoさん」と「タオライアー製作者Yujiさん」ご夫妻だった。

タオライアーアーティストNono

タオライアーとは、大きな木を波模様に削った盤に竪琴のように

弦が張られている楽器で、そこから響き渡る音と振動が

心身を癒す効果があるという。ちなみに音階は「レミラシ」の4つ。

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長い冬の間、牛舎で退屈している牛達の話をしたら、Nonoさんが

「牛さん達のために、牛舎でタオライアーを奏でましょうか?」と

提案して下さったのだ。

そして「ふぉわわわ~~~ん・・・」とタオライアーの音色が牛舎に

響く事となった。

丁度、ご飯中だった牛達は、初めのうちは草(ご飯)に夢中だった。

タオライアーの音色は本当に美しい。

次第に1頭、また1頭と顔を上げ、お椀型になっている両耳を

ひょこっとNonoさんの方に向けて、じっと聴き始めた。

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食欲に火がついて、ガッついていた表情が、だんだん柔らかなものになり

全員がタオライアーの音色と響きにすっぽり包まれて

とても、心地よさそうな穏やかな顔つきになったのだ。

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牛達のこんなに心地よさそうな表情を初めて見た。

牛達も美しい音が好きなんだな。

タオライアーの音の波動は、まるで身体に浸み込むように

体の中の水分を震わすように、伝わってくる。

牛達も、きっと同じような感覚だったのだろう。

演奏が終わってしまうと、牛達はゆっくりと顔をかしげて、

「もう終わり?もっと聴きたいなあ」と言った。

 

 

優秀賞の輝き

今年も、うちのジャージー牛達は優秀賞に輝きました。

 

「乳質検定」というシステムがある。

1回/月実施される検査で、牛1頭1頭から搾れる牛乳の

成分(乳脂肪分、乳たんぱく質、体細胞数など)を数値化してくれる。

農家さん単位ではなく、牛単位なので、

どの牛が調子がいいか、悪いか、また給与飼料は妥当なのかなど

その分析結果を活用している。

そして、1年分の乳質検定の結果をもとに、

毎年開催されているのが「乳質コンテスト」だ。

我家のジャージー達は、そのコンテストで2年連続「優秀賞」を受賞している。

「なんって、素晴らしい子達なの!この、出木杉君め♡」

私は喜んだ。優秀な我が子を持つ幸せだ。

そして、この誉をなんとか牛達に伝えて、共に喜び合いたいと

考えてしまったのだ。

「そうだ、この表彰状を額に入れて牛の首から掛けて記念写真を撮ろう!」

私は、意気揚々と額を用意して、長めの紐をくくりつけた。

それを牛の元まで持っていき、

「おめでと~♡」と紐を首にまわそうとした。

ところが、牛は出来るだけ首を後ろにひねって、紐を掛けさせまいと

意思表示をしてきた。「い・や・だ」

私は浮かれていた。

「どおした、どおした~、誉だぜ~」などど、ほざきながら

執拗に紐をかけようとした。

逃げ回る牛達。追い回す私。

そして、やっとの事で紐が首にまわった瞬間

牛は渾身の力を込めて

「いっや~~~~~~~~~~!!」と

首を中心に体ごと振り乱し、額は四方八方に飛び回り

私は頭突きを食らった。

「ぎゃあ~!ごめん!KYでした!今解くからお願いいい、じっとしてえええ!」と

ロデオマシーンと化した牛の首に絡まった紐を

必死で解き、額はうんこの中に落下してカツンと小さな音を立てた。

「はあ、はあ・・・ご、ごめんなさい」

記念撮影は出来なかった。牛と喜びを共にする事も出来なかった。

だけど、本当に君たちは立派なんだよ。

 

在庫限りですが

金のスモークチーズ2本入をご希望の方は下記URLまで

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スモークチーズがデビューした日

「METRO MIN.」というフリーペーパーがある。

関東圏の地下鉄の駅でもらえるというが

見事に面白い冊子で、タダなんて勿体ない!と思う。

なぜなら、内容(記事)の取材に、結構な時間と労力とお金がかかっている・・。

「日本チーズのこえに出会う旅」という人気コーナーがあり

実は12月号に、我が家が載っていた。

東北チーズ特集の回で、ひょんな事から

取材をして頂き、ちゃっかり載せてもらっていたのだ。

取材は多忙を極めたことだろう・・。

我家を含め、東北(とにかく広範囲)に点在する4軒のチーズ生産者さんを2日間で

まわり切るのだ。4名の方々が、牧場に実際にいらっしゃって、チーズ、牛をつぶさに取材して行かれたが

「限りある時間をものにしろ!」という気迫満々な4人だった。

さらに冊子配布後「共創料理」と題して、その時に記事になったチーズ達を、取材に同行してくれたシェフのお店で(実際に現場を見た上で)料理して、

生産者のお話を聞きつつ食す、という食事会まで開催される。

(応募形式で参加者を募るのだが、倍率が実に15倍!)

今回は東北を代表して、「共創料理の会 in ビストロ・コティディアン」に参加させて頂いたのだ。

毎度思う事だけど、東京と奥中山は別世界だ。

もはや海外と言っても過言ではない気がする・・。

都会の方々と生産者との間には、それ程の隔たりがあり、

その「距離」を美味しいお料理と共に、会話でもって縮める事が、この会の趣旨。

三谷家は夫婦で参加させて頂いたのだが・・

この趣旨をすっかり忘れて「ああ、幸せ・・」と舌鼓を打ちまくってしまった。

今回、我家の定番の

モッツアレラ(丸タイプ)」「ストリングチーズ(ひとくちサイズ)」

フロマージュブラン」「ヨーグルト」と

気まぐれに出没する「スモークチーズ」が使用された。

このスモークチーズは、ストリングチーズを干したものを冷燻にかけたもので

以前、バーベキューをした時に、思い立って燻製をしてみたら

ことのほか美味しかったので、殆ど自家用程度に気まぐれに作っているものだ。

自家用というか、ついつい手が伸びて、いつの間にか食べちゃってる感じで

世にお目見えする事は滅多にない。

そんなスモークチーズが、コティディアンのシェフの手によって

オムレツになって出てきた。

さも大事そうに卵の中にくるまれて、ほのかな燻製の香りを放つスモークチーズ

味わえたのは、なんとも嬉しいものだった。

奥中山でひっそり生まれ、ひっそり食べられていた

スモークチーズが、東京で食に強い興味を抱いてくれているお客様に

大事そうに召し上がってもらっている。

ささやかなデビューの瞬間だった。

ああ、よかったね、スモーク。

そんな親心が、じんわりと芽生えたのだった。

気まぐれのくせに・・。

 

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